美術館次回予告
2021.3.1 - 12.25
軽井沢千住博美術館 開館10年の軌跡展
新作「冬の一隅」本邦初公開
2011年10月に開館した当館は、今年10周年を迎えます。開館に向けた期間、千住博が東京藝術大学在学中に描いた「六月の空」(1978年)から「ウォーターフォール」(2011年)まで、その間の作家の代表作を収蔵してまいりました。開館後は、1995年第46回ヴェネツィア・ビエンナーレで名誉賞を受賞した「The Fall」など、過去の代表作の収蔵もありましたが、積極的に新作の収集に努め、10年間で新旧24点がコレクションに加わりました。本展では、新しく収蔵した新作の「冬の一隅」(2020年)を公開します。
当館が立地する軽井沢は豊かな自然と文化が調和した場所として知られております。千住博は開館後も毎年美術館を訪れ、軽井沢の自然に触れることも契機となり、自然をモチーフにした作品が生み出されました。新作「冬の一隅」もその一つです。避暑地として知られる軽井沢では、ビジターの殆どは春から秋に訪れ、それら季節の自然の美しさについては多く称賛されています。一方で、冬の軽井沢の自然の美について語られる声はあまりありません。「冬の一隅」は、そんな冬の美について語るように描かれた作品です。モノトーンの色調で描かれ、今にも小雪が舞ってきそうな寂寥感が広がる冬の空の、その弱まった太陽から、わずかながらも確かに陽光が差し、湖面と樹木の一部を照らしています。モノトーンの画面による厳かで神秘的な千住博の美の世界が広がります。
「冬の一隅」の収蔵により、当館のコレクションには春夏秋冬の四季をモチーフとした作品が揃うことになりました。春は、夜を照らす桜花が描かれた「夜桜満開」、夏は、初夏の明け方に清々しくも不可思議な陽光が差し込む森が描かれた「光」、秋は、夏という語を用いながらも、初秋の陽の光が暮れることを惜しむかのように彼方を照らす陽の余韻を描いた「晩夏」、そして新作「冬の一隅」です。これらの四季の絵画を主題として、本展では四季をテーマとした展示構成で企画されています。千住博の画業40年を季節の一巡りとして、ビルシリーズ、自然の描写、滝、波、崖まで、絵画のモチーフの変遷により見ていくことができます。また、開館10周年の当館の軌跡も、収蔵コレクションの展示を通じご高覧いただけましたら幸いです。